奇跡の脳: 脳科学者の脳が壊れたとき / ジル・ボルト・テイラー(新潮文庫)
アマゾンの商品の説明より
内容紹介
脳科学者である「わたし」の脳が壊れてしまった――。ハーバード大学で脳神経科学の専門家として活躍していた彼女は37歳のある日、脳卒中に襲われる。幸い一命は取りとめたが脳の機能は著しく損傷、言語中枢や運動感覚にも大きな影響が……。以後8年に及ぶリハビリを経て復活を遂げた彼女は科学者として脳に何を発見し、どんな新たな気づきに到ったのか。驚異と感動のメモワール。
前半は脳卒中に襲われ、その経過とそこからの回復までの過程が書かれていて、脳科学者として、自分の症状を見つめて書いているのがすごいです。8年間のリハビリは大変だったと思いますが、割と淡々と書かれていて、復活を遂げた強さ、感謝を忘れない心に感動します。後半になると、少しスピリチュアル寄りにもとれる記述になってきます。
著者は左脳を損傷し、左脳の支配から解放されて右脳が優位になったとき、宇宙とひとつになったと感じ、涅槃(ニルヴァーナ)の境地に入った感覚を持ったという。
左脳が回復してくると、頑固で傲慢で皮肉屋で、嫉妬深い性格が、傷ついた左脳の自我(エゴ)の中枢に存在することを知り、意識的にそういう古い回路の一部をを蘇らせずに、回復させる道を選らんだ。
「頭の中でほんの一歩踏み出せば、そこには心の平和がある。そこに近づくためには、いつも人を支配している左脳の声を黙らせるだけでいい」(P.176)
「痛みは選ぶことができませんが、苦しみは、意識的な決断だと言えるでしょう。」(P.285)
スピリチュアル的体験というのは、こういうことで説明できるのかもしれないなあ、と思いました。
困難なとき、心のおしゃべりを止めて、右脳を優先させるようにする。自分のネガティブな面が出てきそうになったら、それを意識的にやめることは出来る。
そうしたら、よりよい人間になれる。みんながそうしたら、平和なよりよい世界が実現できる。そんな可能性を感じました。
私はEテレの「スーパープレゼンテーション」という番組でジル・ボルト・テイラーのスピーチを見たのがきっかけで本書を読んだのですが、そのスピーチの中で、euphoria (幸福感、多幸感)と言っていたのが印象的でした。
euphoria っていい言葉だ。